eriのBlog

『ROCKS』vol.6 朝日出版社

『ROCKS』vol.6 朝日出版社



毎日を生きていて、実に様々な情報を
(だいたいはそれを多いとも感じないほど慣れてしまっているため)
無意識的に身中を通過させ、
何かは蓄積されたり、誘発したり、故意的に押しやったり、
忘れ去ったりしている。

琴線に触れるものに出会うための凸部分が
情報の氾濫によって埋められてしまったりしているのかしらと、
思う。

実際、web上で『知りたいな』という欲求を
ある程度満たすほどの情報というは、
そのものの本質さえもねじ曲げてしまうほどの簡潔さで、
手垢のついた"受け売り"の言葉で、
手に入れることができる。けど、前記したような、
頬を上気させたり、過去の苦々しいことをまざまざと思い出したり、
居ても立ってもいられなくなってしまうほどの意欲に駆られたりする、
心から突き上げるような衝撃的な出会いというのは、
人と物との物理的な接点から生まれるものが、
本来在るべき姿なんじゃないかと、
完全にこの現代の狂った利便性を求めがちな世界にどっぷりと
肩まで浸かっている私でさえ、感じる。

何かを手にして、どこかに赴いて、誰かに会い言葉を交わし、
自分の持っているものと、新しい何かを並べて、
合わせてみたり、見比べたり、批判したり、愛し始めたり
すべきなんだ。

かくいう私も、webという媒体でこれを書いていますが
インターネットを否定している訳では毛頭ない。
これは人が賜った強力なコミニュケーションツールであり
健康的にパワフルに使われるべきもの。
何かと誰かを繋ぐ魔法の架け橋。だと思っています。
但し、『健康的に』というところが要だとも、思っています。


少し話が逸れたけれど、毎日通り過ぎる情報ってのには
とにかく色んなものがある。
歩いて見かける選挙のポスター、耳に入ってきた誰かの会話、
飲食店の出したゴミの袋、予報とずれた天気、
知らないアイドルの顔、
すれ違った人のファッション、新聞の見出し、
ラジオから流れる流行りの曲、コンビニのパンの袋の文字、

など



本当はそれぞれが それぞれに何かに特化して
それぞれに意味を持つ物なのに、
それに対して深く掘り下げる『時間がない』ために
通り過ぎるただのミクロな情報と成り下がっている。

本当はすごく、勿体ないことだし、
それらに気づいて、手に取ることができる自由を与えられている、
ということさえ、事実忘れてしまっている。



なんでそんなことを書き始めたかって、
この新しいROCKSは、私にその時間とチャンスを
とってもエッジの効いた独自な視点で与えてくれたから。
私が本誌を読んだ二時間にも満たない間に
色んな、普段は白目だけで意識するような事柄や、
人の発する言葉やパワーを、心の芯で感じることができた。

それぞれの視点で、それぞれの人生において語られる、
それぞれの真実。

全く違うようでいて、
実は本質的に、
"自由であり個人で在ること"、という同じ方向を向いている。

でもこれはきっと無作為にばらばらと集めたのでは、
このようにキラと光るものにならなくて、
"自由であり個人で在ること"を体現しているような、
本誌編集長の福井さんだからこそ、成せる事なんだと思う。



今、
テレビやラジオ、本に雑誌など今まで情報を伝える媒体の
メインだったものにインターネットが取って代わろうとしている。
とくに紙媒体なんて、もう少ししたらなくなるんじゃないか、
なんて声だって聞く事も少なくない。
だけど私は、そんなことは絶対にないし、あり得ない。
と胸を張って(多少虚勢も含みつつ)言う。
だって、人があのぬくもりを忘れられる訳がないから。
得る情報や画がたとえ同じだったとしても、
経年によって背が灼けてしまったお気に入りの本や、
買ったばかりの雑誌の香しい匂い!
読みたくても勿体なくてベッドサイドに置いてある本、
何度も開いて指でなぞった、あの人の、あの言葉。
あの心のときめきをいかにして忘れようか!!

もちろん印刷物でなくても、
手紙やアルバムも右に同じ。


形は変わりゆくことは確かではあると思う。
無くなってしまう、というのではなく
逆に不必要な物がふるいにかけられて、
残されるべきものだけが、
形として創られ、人の手に渡り、愛でられ後世に残される。
それは、きっと物の美しい終着点なんじゃないか、
なんて、夢をみているのです。
そしてそれを前頭葉の一番最前列に思い浮かべながら、
私も紙に乗せたいと思う物を
日々渾身の力で生み出そうという心意気。

ROCKSによって再認識させて頂きました。

さて私が参加させて頂いている
今回の対談連載"好きこそものの上手なれ"第二回のゲストは
立花ハジメさん。

両親的でもなく
親友というのでもなく、
恋人なんてごめんだし、
昔からのよしみ、なんて呼ぶには絆が深すぎる、
私の人生のキーパーソンをお呼びしました。

対談内容としては
相手が親密だったから余計なのか、
弱音の吐き方が、自分の若さや青臭さが露見するので、
自分としてはやれやれ、という感じですが、
それはどうしようもできないのです。
(ので敢えて添削していません)
いつなんどきでも、今の自分は未来の自分になれないし、
逆に今の自分は過去の自分に戻れないのです。
今の自分を受け入れると、今まで触れたくなかった自らの青臭さも
意外にすんなり見守れるもの。


長くなってしまったので
特に面白かったという箇所を箇条書き。
ぐっと涙をこらえるところも、
思わず風呂場に笑い声が響いたところも、
自分の心情と重ね合わせて頷いたところも、
切り口が多様な分、それに伴った私の心情も様々でした。
いやあ、実に面白い。
そして、読んでいる途中に、
その記事と、前に読んだ記事との意外な接点や共通点を
見つけたり。
まさに人生の縮図のよう。


○巻頭、オノ・ヨーコさん、川久保玲さんのイッシュー。
私も日々の切磋琢磨を怠らなければ、彼女たちに幾分かは
近づけるだろうか。


○蜂賀亨さんの"INDISPENSABLE BOOKS OF HACHIGA"
雑誌の魅力について「紙でつくられたクリエイティブなプロダクト」
と書かれたくだり、雑誌の未来についての予見に、胸がキュンとしました。


○菊地成孔さんの"都市の同一性障害"
いやあ、声をあげて笑ってしまった‥‥痛快とはこの事です。


○城田優さんの"ガテンな現場"
彼の事はこの誌面で知りましたが、思いがしっかり伝わってきて、
自分と重ね合わせたりしてしまい、彼も(自分も)応援したくなりました。

○青野賢一さんの"HARAJUKU IMPRESSION"
チョイスされた場所に対して、そこに合った本とCDを選ぶ
という斬新なイッシュー。読み物としても、ソースとしても、
信頼できるバリューのページでした。これは青野さんにしかできない!


ああ、駄目だ。
書ききれない

だって岡沢さんの対談ページも素敵だったし、
大好きな魚力の特集も最高だし、
伊賀さんと戊井さんの本の虫対談も一字一句見逃せないし
満島ひかりちゃんのインタビューもかっこよかった


というわけで、長々と書きましたが、
こんなおもしろーい雑誌に参加させて頂けて、
光栄でとっても嬉しいです。
感謝。








2010-04-05 03:40:00

PROFILE

eri

eri

デザイナー。1983年、ニューヨークで過去2番目の大雪の日に生まれる。
90年後半から02年にかけバンド『立花ハジメとLow Powers』、『The Japanese』でボーカルを担当。
02年より、すべて古いパーツから作られるドレスやハンドメイドのレースのアクセサリーを展開するブランド"chico"をスタート、04年に立ち上げた"mother"は今年5周年を迎え中目黒の目黒川沿いに旗艦店をオープン。
現在、音楽家、湯川潮音さんの衣装とADを担当、雑誌『装苑』『真夜中』で連載中。
http://people.zozo.jp/eri

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