福井 盛太のBlog

電子書籍の幻想。

急に盛り上がりはじめた「電子書籍」ですが、
これを福音とばかりにちょっと浮き足立っている
中小出版社の関係者によく出会います。



好機到来。


千載一遇のチャンス。



何でもいいけれど、
そんな感じで張り切っていらっしゃるのです。


その心意気や、よし。


でも、ちょっと待って欲しいです。


単行本にしても雑誌にしても、
紙で売れていないものを電子にしたところで、
それは売れないと思います。


というか、電子書籍で売れる物を作れるのなら
すでに紙の段階でも売れる物を作れているはず。


そこは冷静に考えた方がいいでしょう。


もちろん、日本独特の流通や商慣行、
大手出版社による既得権益の存在によって、
「本来売れるべき自社の本が、売れなかった」と
自己分析しているのなら、別ですが。


iPhoneで
「もし高校野球の女子マネージャーがドラッガーの
『マネジメント』を読んだら」が
簡単に1位になってしまったことを考えれば、
そのあたりは、よく理解できると思います。
(iPhoneユーザーをターゲットにして
作り込んだ数々の書籍系コンテンツを差し置いて)


電子書籍黎明期は、「かつて本や雑誌を紙で読んでいた」
30歳代、40歳代のお客様に向けて商品を作っていくわけですから、
限りなくこれまでの「ヒット本」「ヒット雑誌」の
作り方の変形版で、ある程度対応できると思っています。

つまり、現在売れている本、
ヒット企画を連発しているところであれば、
電子書籍に移行しても大丈夫。


結局、iPadだから、Kindleだからといって
いままでまったく本を読まなかった人が、
突然本を読み出すことはないと思うのです。

いま、本を読んでいる人が、
より本を読むようにはなると思いますが。


2010-05-11 20:13:00

電子書籍の行方。

みなさんご無沙汰です。

更新をサボっている間に、
すっかり盛り上がってきました「電子書籍」。

先日SPBSで「出版の未来と著作権」という
セミナーを開催させていただきましたが
毎回満員御礼状態。

それくらいに、いま、出版界の関心は
電子書籍時代の“出版物のあり方”に向かっているわけです。

そのような状況を踏まえ、
僕なりに今後の出版物の行方を占ってみたいと思います。



まずは、電子書籍端末の優勝劣敗について。


いま、「Kindle」が勝つか「iPad」が勝つか、などという議論が
あちこちで行われているようですが、
ハッキリ言って、これはソフト=コンテンツ次第だと思います。


読者に受けるコンテンツが「Kindle」に集まれば
「Kindle」の勝ちだし、
「iPad」に集まれば、「iPad」の勝ち。


「端末の魅力」だけを考えれば、
そりゃあ汎用性とデザイン性の高い「iPad」の方が
リードしているでしょう。

実際に手に触れてみましたが、「iPad」には、
ガジェット好きの心をくすぐるモノがあります。

とても楽しいですよ。

ただし、そのことと、
「面白いコンテンツが集まる」こととは別の話です。

プレステとwii(ファミコン)の闘いの歴史を眺めてみれば一目瞭然。

映像の表現性と機械性能とデザイン性で一頭地抜き出たプレステが、
なぜwiiに敗れたのか。

それは単に、プレステ側が画像のきめ細かさや
表現性などに拘るあまり、
「面白いソフト」をつくるという大前提を忘れてしまったから。

任天堂は、ゲームの原点(皆で遊べる楽しいソフトを揃える)に
帰ったから勝ったのです。

技術力と性能とビジネスの成功不成功の関係については、
名著『イノベーションのジレンマ』に
詳しく書かれているので触れませんが、
技術力と表現性と、それが売れるか売れないかは、
ちょっと次元が違う話なのです。


それは、「Kindle」も「iPad」も同じだと思っています。


出版不況と言われながらも、
いま、現実に本を読んでいる人たちは数多くいます。
そういう人たちが「面白い」とか、「必要だ」と思うコンテンツが
どれだけ集まるか。

そのようなコンテンツが集まるプラットフォームを
構築できるか否か。

それが、電子書籍端末の売れ行きのすべてを決めると思います。




次に、“紙媒体”としての本の将来について。

正直、現状の物流レベルで生き残るのは厳しいでしょう。

ただ、現在でも「レコード盤」や「レコードプレーヤー」を
所持している人がいるように、
「紙の本」が消えてなくなることはないと思います。


とは言っても、
それは、「モノとしての魅力」がある本に限られます。


たとえば、夏目漱石の小説の初版本って、
見てみたいと思いませんか?

僕は夏目漱石の初版本を見てみたいし、
自分にとっての適正価格であれば、手に入れたいと思う。

で、中身は「電子書籍」で読む(笑)。

このような、蒐集物としての「本」と
実際に読む「本」が別れていくのではないかと。

そんな気がします。



僕自身は、出版物というものの概念が変わることに、
胸を躍らせています。

表現方法の選択肢が一気に増え、かつ、流通の多様性も得られる。

本の作り手として、送り手として、
こんな素晴らしいことはない。

きっと、読者もそう思っているのではないでしょうか。


これから100年後、日本の出版の歴史の中で
2010年という年がどう位置づけられるかはわかりませんが、
いま、眼前に広がるチャンスをどう捉えるかで
出版人としての今後の人生は決まるような気がしてなりません。



作家の村上龍さんが、電子書籍に関連しての意見を述べています。

首肯する部分は、多々あります。


2010-05-08 18:56:00

PROFILE

福井 盛太

福井 盛太

SPBS CEO/総合PD/ 編集責任者

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