みなさんご無沙汰です。
更新をサボっている間に、
すっかり盛り上がってきました「電子書籍」。
先日SPBSで「出版の未来と著作権」という
セミナーを開催させていただきましたが
毎回満員御礼状態。
それくらいに、いま、出版界の関心は
電子書籍時代の“出版物のあり方”に向かっているわけです。
そのような状況を踏まえ、
僕なりに今後の出版物の行方を占ってみたいと思います。
まずは、電子書籍端末の優勝劣敗について。
いま、「Kindle」が勝つか「iPad」が勝つか、などという議論が
あちこちで行われているようですが、
ハッキリ言って、これはソフト=コンテンツ次第だと思います。
読者に受けるコンテンツが「Kindle」に集まれば
「Kindle」の勝ちだし、
「iPad」に集まれば、「iPad」の勝ち。
「端末の魅力」だけを考えれば、
そりゃあ汎用性とデザイン性の高い「iPad」の方が
リードしているでしょう。
実際に手に触れてみましたが、「iPad」には、
ガジェット好きの心をくすぐるモノがあります。
とても楽しいですよ。
ただし、そのことと、
「面白いコンテンツが集まる」こととは別の話です。
プレステとwii(ファミコン)の闘いの歴史を眺めてみれば一目瞭然。
映像の表現性と機械性能とデザイン性で一頭地抜き出たプレステが、
なぜwiiに敗れたのか。
それは単に、プレステ側が画像のきめ細かさや
表現性などに拘るあまり、
「面白いソフト」をつくるという大前提を忘れてしまったから。
任天堂は、ゲームの原点(皆で遊べる楽しいソフトを揃える)に
帰ったから勝ったのです。
技術力と性能とビジネスの成功不成功の関係については、
名著『イノベーションのジレンマ』に
詳しく書かれているので触れませんが、
技術力と表現性と、それが売れるか売れないかは、
ちょっと次元が違う話なのです。
それは、「Kindle」も「iPad」も同じだと思っています。
出版不況と言われながらも、
いま、現実に本を読んでいる人たちは数多くいます。
そういう人たちが「面白い」とか、「必要だ」と思うコンテンツが
どれだけ集まるか。
そのようなコンテンツが集まるプラットフォームを
構築できるか否か。
それが、電子書籍端末の売れ行きのすべてを決めると思います。
次に、“紙媒体”としての本の将来について。
正直、現状の物流レベルで生き残るのは厳しいでしょう。
ただ、現在でも「レコード盤」や「レコードプレーヤー」を
所持している人がいるように、
「紙の本」が消えてなくなることはないと思います。
とは言っても、
それは、「モノとしての魅力」がある本に限られます。
たとえば、夏目漱石の小説の初版本って、
見てみたいと思いませんか?
僕は夏目漱石の初版本を見てみたいし、
自分にとっての適正価格であれば、手に入れたいと思う。
で、中身は「電子書籍」で読む(笑)。
このような、蒐集物としての「本」と
実際に読む「本」が別れていくのではないかと。
そんな気がします。
僕自身は、出版物というものの概念が変わることに、
胸を躍らせています。
表現方法の選択肢が一気に増え、かつ、流通の多様性も得られる。
本の作り手として、送り手として、
こんな素晴らしいことはない。
きっと、読者もそう思っているのではないでしょうか。
これから100年後、日本の出版の歴史の中で
2010年という年がどう位置づけられるかはわかりませんが、
いま、眼前に広がるチャンスをどう捉えるかで
出版人としての今後の人生は決まるような気がしてなりません。
作家の村上龍さんが、電子書籍に関連しての意見を述べています。
首肯する部分は、多々あります。
2010-05-08 18:56:00
