日々の生活に疲れているみなさま。もしかして、頭や心がこってはいませんか。
本書『疲れすぎて眠れぬ夜のために』を読んで、現代の知の巨人である内田樹先生の大きな手の上で転がされつつ、気持ちよくすっきりしてみてはいかがでしょう。

本書は5章構成。それぞれのテーマは、「利己」、「働くこと」、「身体」、「アイデンティティ」、「家族」。誰もが少しは気にする問題をはらむキーワードが並びます。
たとえば「家族」については、「愛情だけで結ばれた共同体=家族」という幻想に警鐘が鳴らされます。なぜなら、「愛情」がなくなったとたん、その血縁集団は「家族」とは呼ばれなくなるから。現行の制度には、たしかに問題点もある。しかし、ある種の妥当性も認めなければならない。「結婚」という社会的制度の価値は、たしかに存在する。
こんな風に、現代人の多くが悩んでいそうなテーマに、内田先生は、あくまでクールに切り込みます。しかも、語り下ろし原稿だからか、とにかくすっと話が頭の中に入ってくる。
いかなる話題が飛んできても、まるで千手観音かなにかのようにすばやくキャッチし、鮮やかな答えを投げ返す内田先生の知的体力にはため息をもらすばかりです。
私を安眠に導いたのは、このひとこと。
「君たちにはほとんど無限の可能性がある。でも、可能性はそれほど無限ではない」。
一人の人間ができる「がんばり」には、精神的にも、肉体的にも、限界がある。それをわかっていない現代人は多すぎる。そう、内田先生はおっしゃいます。自分の可能性を伸ばしたいのなら、それが有限であることを理解し、自分をかわいがってやることがいちばんだ。これ、皆が見ようとしないものの、真実をついていると思うのです。
朗らかに楽になれる、しかも知的な読書体験を、ぜひ。
担当:内山
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2012-02-26 13:16:00






