
村上春樹さんの小説には、様々なジャンルの音楽が登場します。
ビートルズやビーチボーイズ、ボブ・ディランなどロック系が多いのですが、その他にもジャズやクラシックなども流れてきて、物語の中に静かに彩りを与えています。
本日ご紹介するのは、イラストレーターの和田誠さんが描くジャズ・ミュージシャンの肖像に、村上春樹さんがエッセイを添えたジャズ名鑑ともいえる「ポートレイト・イン・ジャズ」です。
村上春樹さんは元々、小説家としてデビューする以前に、ジャズ喫茶を経営されているほど、ジャズに対しての愛情は深く、その気持ちが溢れ出ているようなエッセイになっています。
とはいっても、難しい解説はなく、それぞれのミュージシャンが奏でる音楽、あるいはその人生について書かれた文章には、とても短い短編小説(だいたい3〜4頁です)のような味わいがあって、普段、ジャズを聴かない方にとっても気軽に楽しめる内容になっています。
収録されているのは、マイルズ・ディヴィス、チャーリー・パーカー、アート・ブレイキー、ビル・エヴァンス、ルイ・アームストロング、エラ・フィッツジェラルド・・・などなど。
僕が特に好きなのは、孤高の天才ピアニスト、セロニアス・モンクについての文章です。
『濃いブラック・コーヒーと、吸いがらでいっぱいになった灰皿と、JBLの大きなスピーカー・ユニット、読みかけの小説(たとえばジョルジュ・バタイユ、ウィリアム・フォークナー)、秋の最初のセーター、そして都会の一角での冷ややかな孤独————そういう情景は、僕の中では今でもまっすぐにセロニアス・モンクに結びついている。素敵な情景だ。現実的にはほとんどどこにも結びついていなかったにせよ、それはよく撮れた写真みたいに、美しい均衡をとって僕の記憶の中に収められている。』
『それも孤独のひとつの切実なかたちなのだと、僕はそのときに思った。悪くない。寂しいけれど、悪くない。僕はそのころ、いろんな孤独のかたちをひたすらあつめていたような気がする。山ほど煙草を吸いながら。』
あとがきで、和田さんも書いているように、村上さんは、単なる楽曲解説ではなく、ジャズを聴く気分やジャズが持っている力を的確に表現していると思います。
寒い日が続いていますが、お休みのときには、暖かい部屋で温かいコーヒーを入れて、好きな音楽(できればジャズを)を聴きながら、本書を楽しんでみてはいかがでしょうか。
担当:加藤
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2012-02-03 17:20:00
