SHIBUYA BOOKSELLERSのBlog

【SPBS Daily Recommend】『永遠平和のために』イマヌエル・カント 岩波書店

「平和」と聞いて、なにを思い浮かべますか。

SPBSのガラス戸を入ってすぐ右を見ると、古典がざくざく置いてあります。その中から本日ご紹介するのは、『永遠平和のために』(イマヌエル・カント 著/岩波書店)。



本書は18世紀ドイツの哲学者カントによって書かれた、世界平和への道筋を示す書。人類がめざすべき最高の目標を「永遠平和」とし、そのために何をなすべきかをやさしい口調で描き出します。

この本の魅力は、そこに普遍的な主張を含んでおり、それが空想に終わっていないところです。書かれた当時も現代も、各地で紛争は起き、現実に人が苦しんでいる。国家の政治体制や国同士の協力のしかた、それを構成する個人の生きかたなど、書かれて200年たったいまでも多いにうなずける記述で埋め尽くされています(実際に、国連のアイデアは本書によるものです)。

「平和ボケ」などと言われる日本ですが(文字通り、有難いことです…)、世界平和のために積極的な役割を果たせているのでしょうか、と聞かれると、答えに詰まってしまう…。その原因が何なのか、そもそも「世界平和」なんて大それたものに個人ができることはあるのか…。ふだんはしないような思考を呼び起こしてくれる体験は、まさに古典の力によるものといえるのではないでしょうか。

たったの100ページ、そして500円。何時間かまとまった時間のとれるときに、静かな部屋や喫茶店でじっくり読みたい本です。





担当:内山

※ご購入は


2012-01-29 13:18:00

【SPBS Daily Recommend】『曾根崎心中』角田光代 リトル・モア

江戸時代の人形浄瑠璃作者・近松門左衛門による『曾根崎心中』。この作品は、江戸時代の大阪で実際に起こった心中事件をもとに、女郎・お初と醤油屋の手代・徳兵衛との悲恋を描いています。叔父の暴挙や友人の裏切りといった困難ののちに心中を果たすふたりの物語は、江戸に生きる人々に大きな驚きと共感をもたらしました。現代においてもなお、人形浄瑠璃や歌舞伎、映画などジャンルを超えて読み継がれています。



本日ご紹介するのは、こちらを角田光代さんが小説化した『曾根崎心中』です。著者が時代小説に初めて挑戦した本書。江戸時代を生き抜いたふたりが全身全霊で愛し合う姿は、平成の今だからこそ心に迫るものがあります。宿命と呼んでしまうにはあまりに儚く悲しい恋愛模様が、「愛し方も死に方も、時分で決める。」というコピーに凝縮されているように思えます。

私自身、大学の講義で『曾根崎心中』を扱う授業を履修したときに初めてこの作品を読んだのですが、古語と現代語ではまた違った味わいや勢いがあると感じました、もちろん「古典は読みづらいからちょっと……」という方にもおすすめです。

担当:松井

※ご購入はこちらからどうぞ。





2012-01-28 13:25:00

【SPBS Daily Recommend】『ひとりの夜を短歌とあそぼう』 穂村弘、東直子、沢田康彦著 角川ソフィア文庫




人気歌人の穂村弘さんと東直子さんによる、初心者にいちおしの画期的短歌入門書です。

編集者である沢田さん主宰のメール短歌会「猫又」に投稿された短歌作品を、歌人おふたりが、プロの視点から厳しくも愛情あるコメントで講評。短歌の面白さをわかりやすく伝える1冊です。

本書の特徴のひとつとして、座談会形式の語りをそのまま収録している点が挙げられます。それによって、短歌にまつわる一見難しそうな話題でも、楽しみながら読み進めることができます。

例えば、「自慢する」という題で詠まれた次のような一首。


  いいでしょう?どれもこれもそれらもね ほんのわたしの あれ なんですわ
  (平田ぽん)


指示語ばかりで何を言っているかわからない、効率が悪く社会一般的には駄目な文、しかしそこがかえって妙にひっかかる、こうした無意味さの中に、実は私たちが必要としている何かがあるのでは…。そうした話から、話題は「恋人同士の会話」へと及びます。


穂村 密室の中の恋人同士の会話ってこんな感じになりがちなんですよね。
   (略)お互いにしか通じない相手の呼び名を持っていたりして。
   すごく恥ずかしいやつね。東さんも言うでしょ?

東  え?言わないかなあ……。

穂村 そう?かわいそうに(笑)。

東  かわいそうなの?そんなおかしな呼び名で呼び合わない。

穂村 最初「東さん」って言うじゃん、知り合ったとき。それがだんだん
   「直子さん」とかになって、「なおちゃん」とかなって、
   「にゃおにゃもーん」とかになる(笑)「にゃおにゃもーん」とかなると、
   一番長いから効率的にはよくないわけですよね。だけど効率が悪いという
   ことが二人の親密さの証しであって、それは誰にも通じないわけです。

沢田 特別でうれしいですよね。

東  でも言わなそうな人もいっぱいいると思うけどな。

(『ひとりの夜を短歌とあそぼう』、p.160-161)


穂村さんの力説ぶりと、それを断固否定する東さん。際立つ対比がおかしくもありますが、しかし同時に重要な論点が語られてもいます。効率やわかりやすさといった社会一般の価値観だけではなく、それとは対極にある一見無意味なもの、非効率的で交換不可能なものも、私たちは求めているのではないか、そこに応え得るのが短歌なのではないかという、穂村さんからの問題提起につながっています。

この箇所に限らず、会話の中で笑いや突っ込みをまじえながら、短歌に関わる本質的な問題や、具体的な技術論、作歌法を構えることなく学べる点が、本書ならではの魅力です。

また、プロの歌人おふたりに対して、司会の沢田さんから初心者の気持ちを代弁するような質問が投げかけられたり、あるいは「猫又」同人の批評コメントが紹介されることで、プロの歌人とはまた別の読み方が示されており、初心者が読み進める上での大きな助けになります。

そして忘れてはいけないのが、本書の真の主役ともいえる、「猫又」会員の短歌作品です。年齢、性別、職業、多様な人々から投稿される短歌は、それぞれに味わい深く魅力的で、座談会が盛り上がる何よりの原動力となっています。


 あっちゃんの止まらぬ鼻血怖くなり逃げ出したんだ 蝉が鳴いてた 後藤泡彦
  
 幼な子の生命力(いのち)映して窓硝子べたべたべたべたべたべたべた 宇田川幸洋

 動物屋えらばれぬ子のあし・て・はな・みみ・お・目を見てはならぬ 那波かおり


これらの作品にどのようなコメントが加えられ、その魅力が分析されているかは、是非本書を実際に読んで確かめていただきたいところです。

また、SPBSでは、本書の発売を記念したトークイベントを、2月17日(金)に開催いたします。著者の皆さまをゲストにお迎えし、新刊未収録の「猫又」作品をもとに、短歌の魅力について語っていただきます。短歌初心者の方にもおすすめの内容ですので、皆さまのご参加、お待ちしております。

※イベント詳細はこちらからどうぞ。


担当:江口




2012-01-25 16:41:00

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SHIBUYA BOOKSELLERS

2008年1月オープン。
書棚には、文学・ノンフィクション・エッセイ・詩集などから、写真集・アートブックまで、一点一点セレクトされた本が、新刊・古書問わず並んでいる。入って右奥の書斎コーナーでは、定期的に独自の切り口でブックフェアを開催。その他、SHIBUYA PUBLISHING刊行のオリジナル出版物は常時全タイトル揃い、店頭にて購入することができる。また月に3~4回、SPBSラボと呼ばれるトークショーを行っている。

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