柴田 隆寛のBlog

夜の映画館って、なんか贅沢。



 3ヶ月にいっぺんぐらいだけど、ぽかっと時間が空くと、夜の映画館に出かける。映画館といっても、どこでもいいわけでなく、人がわんさか、眠らない街、新宿のバルト9とかは、ノーサンキュー。決まって向かうのは、都会のエアポケット、六本木の東宝シネマズ。

 だいたい21時か22時頃。地下鉄を乃木坂駅で降りて、六本木トンネルをゆるりくぐり抜けて、閑散とした六本木ヒルズまでぶらりちい散歩。人がいないというのが、かなり重要なポイントで、それだけでアーヴァンな高揚感を覚えるし、時間に余裕があるときは、そのまま映画館に向かわずテレ朝通りにある岩盤浴でゆっくりたっぷり90分のデトックス。修行僧のように汗をかきかき、水を飲み飲み、カラダを清めたあと、誰もいないケヤキ坂をのんびり流して、夜風にあたりながら六本木ヒルズへ向かうのが最高に気持ちいい。

 もともと映画館に行くという儀式自体が目的なので、このプロローグがかなり重要。プールで泳いだ後の牛乳とあんぱんがなぜだか美味しいように、心地いい疲労感を覚えながら、チケット売り場へ向かえるかが、このあと映画館を楽しめるか、つまりはご褒美であるビールの味を大きく左右する。で、映画館に行ったからには、何かを見なくてはならんわけで、だけども、大好きなデビッド・リンチやコーエン兄弟の新作がたとえ上映されていたとしても、そこはスルーして『ごくせん』をチョイスするのが、この場合の正しい選択。深夜の映画館に限って言えば、くだらなければ、くだらないほど、どーでもいいと言われてしまうような映画ほど、火照ったカラダと頭にはしっくりくる。

 風呂上がりでぷらっとチケット買って、1階の売店でキャラメル&塩ポップコーンのハーフ&ハーフとハイネケンの生ビールを買って、エントランスのライトアップされた滝を横目に見ながら、エスカレーターを昇り、ディズニーランドのアトラクションを彷彿とさせる宇宙船のような通路をくぐって、劇場へ入ったときのうれしさったら、もう! 杉本博司の写真のように、客席が無人だったりした日にはしめたもん。それだけで、最高に楽しい夜になる。

 ちょっと、想像してみてください。深夜1時過ぎ。自分以外誰も客席にいない映画館。これほど、贅沢なことってないと思いません? しかも、テレビの再放送で見ればいいような『ごくせん』とか『ルーキーズ』みたいな映画を、わざわざスクリーンで見るという自虐的な贅沢。アルコールの助けもあって、仲間由紀恵のセリフに感極まっちゃたりするピュアな自分を再発見しちゃったりしてね。実際、このパターンで自分『ルーキーズ』でも泣きました。こういう映画の楽しみ方、東京の遊び方も結構楽しいと思うんだけどなぁ。いかがなもんざんしょ?

2010-08-14 00:47:00

夏の日のタンピン三色イーペーコー




 先日、イベントの設営の手伝いで久しぶりに軽井沢に行った。果てさて、いつ以来だっけ? ってしばらく反芻して、ようやく思い出した。

 今から約15年前、大学生の時のことだ。ちょうど、今ぐらいの時期だったと思う。カラオケボックスのバイト仲間の両親が持つ、軽井沢の別荘に遊びに行こうという話になった。メンバーは全部で4人。そもそも20歳そこそこの野郎には、似つかわしくないセレブリティな避暑地。女の子がいれば、きっと展開も違っていたのだろうが、テニスやナンパに興じるでも、温泉につかるでもなく、バイト先からケースごとくすねたビール、冷凍食品のエビピラフ、ポテトチップスといったジャンクフードを食料にして、不眠不休で2日間ブち続ける麻雀トライアスロンを敢行! 

 最終的には、雀力よりも気力、体力、時の運が問われたこの戦い。津波のように襲ってくる眠気、遠のいていく意識と闘いながら、「敵は卓を囲む3人じゃねえ、自分だ!」と己を鼓舞し、恐れをなしては引き返したり、危険牌をブッた切ったりしながら、トップという頂きを目指す終わりなきシーソーゲーム。紫煙でかすむ卓上に、淡々と響き渡る乾いた牌の音、そして時折漏れる溜息。まさに、殺るか、殺られるか。日常にはない殺伐とした空気に言い知れぬ恍惚と不安を覚えながら、魂を振るわせた夏。もしかして、俺たちは今、誰も成し得なかった崇高な儀式を遂行してるんじゃないのかなんて、アホな錯覚すら覚えながら、どうにかこうにか地獄のような2日間を乗り切ったのでありました。

 そんな感じで、寝ても醒めても麻雀三昧だった学生時代。今思うと、平和ボケした日常では味わえない、ヒリヒリした緊張感が欲しかったんだろうな〜。それに麻雀は、常に選択を迫られるゲーム。理想か現実か、勝負するのか、下りるのか? どんなにセコくても勝ちゃいいのか、負けても自分の理想を追い求めるのか? 否が応でも、人間の本性が表れるから面白い。と同時に、いくら頑張ったって、人生にはどーにもならないことがあるっていう厳しさを教えてくれる。実際、麻雀仲間だった後輩の女子は、人生を麻雀になぞらえ、某テレビ局の面接で「好きな役は、タンピン三色イーペーコーです」と役員にのたまい、無事アナウンサーへの切符を手にした次第。

 ところで最近、麻雀も酒もやらず、旅にもいかないって、男子大学生が増えてるようですが、いったい全体何やって遊んでんでしょ? 少々説教臭くなりますが、授業とか真面目に受けてんじゃねーよ! どーしようもない無駄や暇つぶしにこそ、真理は潜んでんだぜ! 

2010-08-14 00:36:00

PROFILE

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柴田 隆寛

編集者/EATer所属。雑誌を主戦場に、書籍やリトルプレス、webの編集を横断的に行う。 主な仕事に『HUGE』、ロバート・ハリス著『人生の100のリスト』(ともに講談社)、『リサ・ラーソン作品集』(ピエブックス)、『KAT-TUN LIVE DOCUMENT PHOTOBOOK』 (角川グループパブリッシング)、「BEAMS」カタログ、「MOTTAINAI」キャンペーンコンセプトブックなどがある。 また、webサイト「夢の病院をつくろうPROJECT」のメンバーとしても活動中。
EATer:http://www.eater.jp/ 

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